血液内科と総合内科の日々~北アルプスを望みながら~
血液内科の武岡です。この5月からあづみ病院に赴任しています。当院は大北地域の医療を担っています。
整形外科と精神科が新専門医制度の基幹病院となっていますが、内科でも様々な疾患や病態を学ぶことができます。
そのことを、医学生をはじめとして皆さんに知っていただきたいと思いブログへの投稿を始めることとしました。感想やご意見がいただければ幸いです。
(具体的な症例や状況について記載していますが、個人情報に配慮して一部は脚色を含む場合があります。)
60代の女性。湿性咳を主訴に受診。
低酸素血症を認めず。外来での精査中に貧血が出現。腹部造影CTを撮影され、撮像部位に入っていた下部の肺野で、末梢の肺動脈の血栓を認めた。
貧血の悪化のため血液内科に紹介。
下肢静脈エコーではヒラメ静脈に血栓を認め、深部静脈血栓(DVT)+肺血栓塞栓(PE)と診断。
貧血は直接クームス陽性で、自己免疫性溶血性貧血(温式AIHA)と診断。
数ヶ月前からドライアイと口腔内乾燥を自覚。ガムテスト陽性・SS-A抗体陽性。SLEの診断基準は満たさず、シェーグレン症候群(SjS)とそれに伴うAIHAと診断。他の検査結果から抗リン脂質抗体症候群は否定的。
この病態でPEとの関連はどういうことなのかな?と調べてみました。
The Risk of Deep Venous Thrombosis and Pulmonary Embolism in Primary Sjögren’s Syndrome: A General Population-Based Study
J Rheumatol. 2017 ; 44(8): 1184–1189. doi:10.3899/jrheum.160185.
SjSはDVT+PEのリスクであり、特にSjSと診断された最初の1年でPEの発症リスクが高いという報告です。
経過を通して低酸素血症は認めず、PEの発見の難しさを改めて認識しました。
血液内科 武岡康信